登場人物 Character
作品に登場する全キャラクターを紹介します。『ディエンビエンフーTRUE END』1〜3巻、新装版『ディエンビエンフー』1〜6巻(双葉社)、続いて「第二部」(IKKI版7〜10巻)「第三部」(IKKI版11〜12巻)と順を追って公開する予定です。
『TRUE END』とIKKI版「第三部」には設定上の齟齬があるため、「※」マークで注釈を加えています。歴史上の人物や参考になる関連エピソードについては、Wikipediaや台詞botへのリンクを併記しています。
また、作品のWikipedia、アンサイクロペディア、台詞botなどを参照すると、「黒歴史」を含む作品全体の概要が多角的に把握できると思います。ニコニコ動画でも新装版1〜3巻と、『TRUE END』1〜3話を公開中。
http://seiga.nicovideo.jp/comic/25591
『TRUE END』はテキスト、画像ともに書き下ろし、それ以外の初出は画集&設定資料集『The ART of Dien Bien Phu』(グラフィック社)です。
【TRUE END】第1巻 登場キャラクター
(双葉社『ディエンビエンフー TRUE END』1巻より)
双葉社移籍し「月刊アクション」で2017年から1年半、全18話連載された最新作にして完結編が『ディエンビエンフーTRUE END』。IKKI版を読んでなくても、新装版を読まなくても、最低限この3冊で物語は完結します。
ニコニコ動画にて『ディエンビエンフー+『TRUE END』1試し読み公開中
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【ヒカル・ミナミ】Hikaru Minami
米陸軍報道部に配属された米兵。1945年8月6日広島に原爆が投下された瞬間にアメリカで生まれた日系アメリカ人。少年のように見えるが、1970年からスタートする『TRUE END』冒頭では24歳。姓「ミナミ」はベトナムを指す「南越」に由来し、名「ヒカル」は大量殺戮の象徴である原子爆弾の炸裂光に由来する。
米陸軍報道部として1965年にベトナム入り、ゲリラ少女兵士「お姫さま」との運命的な出会いを経て、ティム・ローレンス率いる特殊部隊「野良犬たち」(ストレイ・ドッグス)に同行。ティム、その師であるヤーボ大佐の死を見届けつつ、なんとなく戦線離脱。アジア系に見えるルックスを利用して、お姫さま、おばあちゃんらが属する「南ベトナム民族解放戦線」に紛れ混む。
1968年のテト攻勢の敗走以降は一時期消息不明に。ソンミ村事件の現場に遭遇し(※IKKI版10巻)茫然自失となったが、やがて米兵に発見され「逃亡罪」「スパイ容疑」でサイゴン近くの米軍営倉に収監された。
愛用のカメラは軍支給品のライカⅢf、ライカM3。最終的に「野良犬たち」メンバー「インソムニア」にコンタックスⅡを託されるが、1966年アッテンボローの戦いの最中それも失ってしまう。
営巣を出て以降は、復活したヤーボ大佐率いるティム・ローレンス奪還作戦に同行。お姫さま、そしてティム、戦争と恋愛に決着をつけるべく再びジャングル・クルーズが始まった。3年後の1973年3月29日、米軍完全撤退が完了する日に彼は死ぬ。それは物語のはじめから決まっている。
ヒカル・ミナミ台詞bot
【お姫さま】Princess
南ベトナム民族解放戦線(ベトコン)最強の少女ゲリラ兵士最強の少女ゲリラ兵士にして、ヒカルの運命の恋人。抗仏戦争の終結、1954年5月7日ディエンビエンフー要塞陥落時に生まれる。『TRUE END』冒頭では15歳に。一切の言葉をしゃべらず、唯一「ンクク」とだけ発音するが、ヒカル・ミナミとのコミュニケーションは不思議と取れているらしい。
ベトナム戦争後半1970年代。テト攻勢を経て、世界には反戦、そして厭戦ムードが漂い、エスカレーション(段階的拡大)するに任せてベトナムに集まった米兵たちは徐々に帰還していく。戦場でゲリラ兵士として戦いながら育んだヒカルとの愛の終わり。別離の時、完全撤退の日は迫る。
お姫さま台詞bot
【ヤーボ大佐】Colonel William Jabo
米陸軍の最強戦士にして偉大なる特殊部隊「グリーンベレー」の指導者。口癖は「もっとマシな戦争をやろう」。J・F・ケネディ政権下でベトナム戦争に夢を見るが、理想の戦いとはかけ離れたベトナムの現状に絶望し、その反動のハーシーズチョコの過剰摂取で太ってしまった。
1966年アッテンボロー作戦において、「おばあちゃん」に腹部を斬られて惨敗。息子のように育成したティムも、お姫さまとの戦いの果てに消息不明に。絶望の中、自力で生還したヤーボは、1970年おばあちゃんへのリベンジを胸に誓い、ティム捜索へ乗り出す。
やがて訪れるおばあちゃんとの直接対決。しかしヤーボにはリベンジとは別の企みがあった。
ウィリアム・ヤーボ台詞bot
【民間不正規防衛集団】Civilian Irregular Defense Group program
米陸軍特殊部隊の計画「CIDG(民間不正規防衛集団)」により育成された、山岳民族の現地採用による特殊部隊兵士。精鋭二人がヤーボ大佐に同行した。少数民族であるゆえにベトナム人の大多数を占めるキン族を敵視しており、そんな感情を米軍は利用している。
Wikipedia「民間不正規戦グループ」
※IKKI版4巻に登場する「モンタニャード50」ララとは別人。本編では描かれないが、ライトニングによって育成された設定
【フン(雄)】Hung
通称ベトナム犬。犬種はビーグル。「雄」という名前は紀元前2880年にベトナムを建国した伝説の王フン・ヴォン(雄王)に由来する。性別は雄(オス)。フエ王朝の時代1819年にも目撃談があり、「永劫を生きる魔犬」とも呼ばれる。物語りの始まりから終わりまでを見届ける存在。ノン(傘)をかぶった愛らしい姿は作品のアイコンでもある。
ベトナム戦争でアーロン(米特殊部隊の犬)に出会い、7匹の子犬を授かる。『TRUE END』でアーロンとフンは、まるでお姫さまとヒカルのように親密にしている。
※小冊子「DBPPress」vol.7にフンへのインタビュー掲載。
【仮面の男】The Man in the Mask
1970年、カンボジア国境付近に生まれた「霧の王国」。暴力が支配する恐怖の王国に君臨する仮面の男、その正体こそ1966年アッテンボローの戦いで「お姫さま」に大敗を喫して以降消息不明だったティム・ローレンス。
左眼を貫かれ、脳を損傷し、記憶も失った米陸軍特殊部隊「野良犬たち」最後の生き残りは、仮面の下に何を思うのか?
※『TRUE END』が描かれる以前のIKKI版10巻、11巻では、仮面の男の正体は「ヒカル」。正体をティム変更したことは完結のための大きな変更点。しかし「DBPPress」2号の「ティムと地獄の軍団」という記述から「TRUE END」の設定こそが本来設定されていたものだということがわかる。
【地獄の軍団】Army Corps of Hell
ベトナムとカンボジアの国境付近に発生した謎の集団「霧の王国」に君臨する暴力集団。記憶を失い「仮面の男」となったティム・ローレンスによって率いられる。周辺の人々から「神」と崇められ、国家も政治も無関係に暴力の限りを尽くす。
【クメール・ルージュ】Khmer Rouge
カンボジアの政治組織であり武装集団。完璧な共産主義を目指すポルポト派とともに、後にカンボジア大量虐殺の実行者となる。1970年、カンボジア国境付近で、「地獄の軍団」そしてヤーボ大佐らと遭遇し、三つ巴の戦いに巻き込まれる。
Wikipedia「クメール・ルージュ」
【おばあちゃん】Grandmother
南ベトナム民族解放戦線(ベトコン)を率いる史上最強のおばあちゃん。フランス領インドシナ時代からベトナム全土に暗躍。ズオンや三連華などのベトナムの孤児を引き受け、孫娘で「お姫さま」とともに民兵として育て上げた。
口癖は語尾の「ド」。必殺技は「ドドドドアタック」。「ドドドド」と描かれたスピーチバルーンによる圧力には、あのヤーボ大佐すら退散したほど。
若い頃、フランス領インドシナ時代、グエン朝皇帝の末裔クオン・デと一夜限りの恋で妊娠。シングルマザーとして娘(お姫さまの母)を出産。グエン王朝の復権を密かに夢見るがゆえに、孫娘を「お姫さま(プランセス)」と呼ぶ。
共産主義下において王朝は不必要なもの。その戦力としての重要性とは裏腹に、米軍の敗北が明白になってゆく頃、北ベトナム労働党から危険視されたおばあちゃんは「査問」に掛けられ命を狙われてしまう。
おばあちゃん台詞bot
【アーロン】Arron
米陸軍特殊部隊の犬。犬種はアフガンハウンド。性別は雌(メス)。名前はグリーン・ベレーの創始者アーロン・バンクスに由来する。首輪とベレー帽はティムとおそろい。
ティムが失踪した世界で、ヤーボのもとに身を寄せ静かに暮らしていたが、1970年、ヒカルらとともに哨戒船に乗り込み捜索奪還作戦へ同行。主人(あるじ)との再会の時を待つ。
【TRUE END】第2巻 登場キャラクター
(双葉社『ディエンビエンフー TRUE END』2巻より)
【ティム・ローレンス】Tim Lawrence
ベトナムに「もっとマシな戦争」をしに来たグリーンベレー所属の美少年。1950年イギリス生まれ。トレードマークは金髪の長髪と首輪、横縞のハイソックス。初登場時は15歳。イギリスの貧民街出身、売春婦の母に育てられ父親は不明。1955年にヤーボに見出され米陸軍特殊部隊へ。「生き抜いてやる」が口癖だったが、1966年アッテンボロー作戦でお姫さまに惨敗。
左腕と左目を失いカンボジア国境へ逃げ延びた後、感情と記憶を失った「仮面の男」として「霧の王国」に君臨する。時は経ち1970年、ヤーボ大佐率いるティム捜索隊に遭遇し、ヤーボの命をかけた心理ゲームによって止まった記憶を回復。
以後強制収容所「ハノイ・ヒルトン」に週間され独房にて、自らの肉体を鍛錬しながら「お姫さま」へのリベンジを誓う。1972年ハノイ・ヒルトンを脱したティムは、ヒカルとともに旅に出る。ヤーボ大佐の仇、お姫さまとおばあちゃんに復讐するために。
ティム・ローレンス台詞bot
【ヤーボ大佐(死亡)】Colonel William Jabo
1970年、記憶を失ったティムを蘇らせるために、そして「マシな戦争」を楽しむためにおばあちゃんと死闘を演じたヤーボは死亡。ティムに「野良犬最強」を託し、物語からはフェイドアウトしている。
【モロッコの大男】Big Moroccans
フランス領インドシナ時代から、もともとはフランス人の奴隷、労働力ととしてベトナムにやっていたモロッコ人の末裔。ハノイの強制収容所「ハノイ・ヒルトン」の屈強な門番として、北ベトナム軍に雇われている。
【バオ】Bao
サイゴンの路上で暮らす片足の少年。ヒカルのカメラを盗んで転売するひったくり犯の孤児として初登場。『TRUE END』2巻初登場時には15歳に成長しているが、地雷を踏んで両足を失っている。ヒカルと友情を育みながら、戦争被害者の目線で時にヒカルを批判する。また職はないが妹ニューのビジネスのおかげで悠々自適らしい。
『TRUE END』において、おばあちゃんの密命令のもと南北ベトナム全土にスパイ的に暗躍していたバオは、ハノイ・ヒルトンを脱走したヒカルとティムに合流。完全撤退直前、ヒカルに母国への帰還を勧める。
南北ベトナム統一後の未来1978年のカンボジア戦争にも参戦。生涯を通してその身をベトナムに捧げることになる。
※第三部「胡志明杯」での大活躍と初恋は黒歴史となり消失したが、『TRUE END』でもバオは絶妙の働きをする。
【ニュー】Nhieu
バオの妹ニュー。初登場時6歳。路上のアイス売りから初めて、サイゴンの軍需景気の波に乗り幼くしてビジネスを大成功させる。テト攻勢では、重火器を解放戦線に提供するなど、その財力を生かして影でサポート。その後「ニュー財団」設立。口癖は「メイク・マネ・マネ」。
『TRUE END』では2巻1973年から本格的に登場するが、実は「路上の古着売り」役で第1話にも出演している。お姫さまとヒカルに対しては、友情と同時に憐憫にも似た不思議な感情を持つ。戦争が終わっても、ボートピープルや枯れ葉剤の後遺症の問題にも取り組むなど、情とお金(マネー)を併せ持つ存在。ベトナム市民の守護者。第三次インドネシア戦争ではカンボジアや中国相手に渡り合う。
Wikipedia「カンボジア・ベトナム戦争」
※南北統一後のベトナムの混乱を案じ、ビジネス込みで単身沖縄に渡るという設定もあったが、『TRUE END』でも黒歴史「第三部」でも描かれず。
【ナチスドイツ人間兵器ハインリヒ】Hainrich
フランス領インドシナ時代、ディエンビエンフー基地へ流れ着いたナチスドイツ兵。フランス軍に傭兵として雇われ、若きトン、ディンと死闘を演じ、ディンの目玉を奪った張本人。謎の人間兵器の中の人の名は「ハインリヒ」。
※「鮮血の医療団」を率いるドクターM(メンゲレ)との関係性は不明。また5本の指から放たれる弾丸は『サイボーグ009』アルベルト・ハインリヒを彷彿とさせるが......。
【謎のメイドさん】Maid
フランス領インドシナ時代の若きおばあちゃん。この頃よりベトナムの「真の独立」を望みファン・ボイ・チャウらとともに独立地下活動に暗躍する。ベトナム中部の都市フエ王宮でクオン・デと恋に落ち、人知れず女児(お姫さまの母)を産む。
※『TRUE END』では過去回想の中に登場するメイド姿のおばあちゃんとグエン王朝の関係は、1968年のテト攻勢とグエン王朝について描いた「第二部」IKKI版9巻で深く掘り下げられている。
Wikipedia「フランス領インドシナ」
【レ・ヴァン・ズエット】Le Van Duyet
ザーロン帝とともに独立戦争を戦った腹心。カイン派としてミンマンの暗殺を幾度となく企てる。
※歴史の中に実在するキャタクター
※IKKI版9巻ではそれなりの活躍をするが『TRUE END』では抑えられ、チョイ役にとどまる。
【北ベトナム労働党】North Vietnam Labor Party
北ベトナム軍、政治、経済を牛耳る首脳部。通称「老賢人」。ソ連、中国とのコネクションを縦に絶大な力を持ち、その権力はおばあちゃんやホー・チ・ミンを凌駕する。その正体や個人名は誰も知らず、『TRUE END』作品中では「顔」「姿」は描かれない。
おばあちゃんを絶大な兵力として認めつつ、秘められた「血筋」を調査し、共産主義にとっての危険思想を察知。査問にかける。
※画集&設定資料集『The ART of Dien Bien Phu』における幻の「13巻」構想で初登場。黒歴史化しなければトーナメントバトル「胡志明杯」の終盤にも登場する予定があった。
【TRUE END】第3巻 登場キャラクター
(双葉社『ディエンビエンフー TRUE END』3巻より)
【カイン(阮福景)】Cahn
ザーロン帝の息子。長兄ながら皇帝の座を弟ミンマンに譲る。どことなくヒカルを思わせる見た目と性格。ベトナム犬こと「フン」を飼っている。首の十字架からわかるようにキリスト教徒で親フランス派。
※歴史の中に実在するキャタクター
Wikipedia「阮福景」
【ミンマン(明命帝)】Minh Mang
カインの弟でありグエン朝二代皇帝。父である先帝ザーロンの政治の逆を歩み、フランスの武力援助や宗教を拒み、ベトナムの真の独立を望む。兄と異なり武闘派。ザーロン帝より杖を受け継ぐ。
※歴史の中に実在するキャタクター
Wikipedia「明命帝」
【ホアンキエム湖の亀】Ho Hoan Kiem Turtle
北ベトナム、ハノイの憩いの場「ホアンキエム湖」に棲む亀。1428年レ朝を開いたベトナム皇帝レ・ロイより大剣を預かり、500年以上守護する。1973年、解放戦線の指導者おばあちゃんの命令で「ホアンキエム湖の剣」を緊急搬送する。ベトナム犬と並ぶ『TRUE END』のマスコット。
※歴史の中に実在するキャタクター
Wikipedia「ホアンキエム湖」
【レ・ロイ】Le Loi
13世紀、神より賜ったホアンキエム湖の大剣で中国の支配からベトナムの勝利を勝ち取りレ王朝をいた武人。
※歴史の中に実在するキャタクター
Wikipedia「黎利」
※黒歴史「第三部」では大剣に宿る「霊」として胡志明杯に参戦する予定だったが、『TRUE END』では回想にとどまる。
【7匹の子犬】7 Dogs
フンとアーロンの子供たち。ビーグル犬とアフガンハウンドの雑種であり、人間で言うならアメラシアン(ベトナムとアメリカの混血)だが、フンだけに似ている。1978年おばあちゃん、バオらとともにカンボジア戦争に参戦する軍用犬。ベトナム戦争終結後の世界の象徴。
Wikipedia「ベトナム・カンボジア戦争」
【???】???
物語の果てに登場する最強存在。
【新装版】第1巻 登場キャラクター(双葉社『ディエンビエンフー』1巻より。描き下ろし『チョコレート帝國』1話収録。新装版1〜6巻はIKKI版「第一部」にあたり、また6巻から『TRUE END』繋がり、続きとして読むことができる)
ニコニコ動画にて『ディエンビエンフー』1〜6巻+『TRUE END』1巻を試し読み中
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【ヒカル・ミナミ】Hikaru
米陸軍報道部に配属された米兵。少年のように見えるが初登場時19歳。1945年8月6日広島に原爆が投下された瞬間にアメリカで生まれた日系アメリカ人。ほほの絆創膏は『地獄の黙示録』ウィラード大尉へのオマージュである。当初ライカⅢfを愛用するが、お姫さまと初対面において粉砕、軍部からライカM3を支給される。それも失い、最終的には「野良犬たち」メンバーのインソムニアにコンタックスⅡを託される。
姓「ミナミ」はベトナムを指す「南越」に由来し、名「ヒカル」は大量殺戮の象徴である原子爆弾の炸裂光に由来する。
※IKKI版10巻のラストでソンミ村事件を経て心を失い、続く第三部において「仮面」をかぶり最強のスナイパーとなる展開は「TRUE END」化により消失。『TRUE END』第1話では営巣に囚われたシーンから始まり、何事もなかったかのようにケロッと戦線に復帰しているが、それもまたヒカルらしい。
ヒカル・ミナミ台詞bot
【お姫さま】Princess
南ベトナム民族解放戦線(ベトコン)最強の少女ゲリラ兵士。ベトコンを指揮しベトナム全土に暗躍する最強の「おばあちゃん」に育てられた。抗仏戦争の終結、1954年5月7日ディエンビエンフー要塞陥落時に生まれる。初登場時10歳。一切の言葉をしゃべらず、唯一「ンクク」とだけ発音する。育ての親であるおばあちゃんいわく「ちょっとだけ無口な子」。
※ここでは「Princess」と英語表記を併記したが、おばあちゃんの発音はフランス語。『TRUE END』において1シーンだけ「Princesse」とフランス語表記が登場する。
お姫さま台詞bot
【フン(雄)】Hung
通称ベトナム犬。犬種はビーグル。「雄」という名前は紀元前2880年にベトナムを建国した伝説の王フン・ヴォン(雄王)に由来する。性別は雄(オス)。ベトナム戦争でアーロン(米特殊部隊の犬)に出会い、7匹の子犬を授かる。ノン(傘)をかぶった姿は作品のアイコンでもある。フエ王朝の時代1819年にも目撃談があり、「永劫を生きる魔犬」とも言われる。
【おばあちゃん】Grandmother
南ベトナム民族解放先生んを率いる史上最強のおばあちゃん。フランス領インドシナ時代からベトナム全土に暗躍。ズオンや三連華などのベトナムの孤児を引き受け、孫娘で「お姫さま」とともに民兵として育て上げた。実は共産主義者ではないため北の共産党首脳部とは仲が悪く、ホー・チ・ミンすらさほど信用はしていない。クォン・デと一夜限りの恋でグエン王朝の血を身ごもり、シングルマザーとして娘(お姫さまの母)を出産。グエン王朝の復権を密かに夢見るがゆえに、彼女は孫娘を「お姫さま(プランセス)」と呼ぶ。
おばあちゃん台詞bot
【コンプトン】Compton
ヒカルとパートナーを組んだ米軍報道部記者。つかの間の相棒。戦場においても報道の正義を志すが、潜入取材中、ウォーターメロン軍曹に撃たれる。
【ウォーターメロン軍曹】Sgt. Watermelon
在サイゴンの米陸軍兵。混乱する戦場で、正気を保つためにロリコン化。沖縄嘉手納基地に駐留経験があり、アジア系の小柄な女性が好みらしい。
【編集長】Chief Editor
スターズ・アンド・ストライプス(星条旗新聞)編集長。ヒカル直属の上司。ヒカルに対し「何もしてくれるな」とだけ願う。ヘビースモーカー。不健康そのものな見た目とは裏腹に、バオが仕掛けた爆破テロをも生き抜く。1968年テト攻勢を目の当たりにし、アイデンティティが揺らぐ。自らの頭を拳銃で打ち抜き死亡。ヒカルに残した言葉は「呪われろ」。
Wikipedia「星条旗新聞」
※編集長は『ディエンビエンフー』1巻から飛んでIKKI版10巻で不穏や役柄で登場。『TRUE END』には登場しない。
【バオ】Bao
サイゴンの路上で暮らす片足のストリート・チルドレン。ヒカルのカメラを盗んで転売するひったくり犯として初登場。この時わずか8歳。泣き虫で情に厚く、しかし無責任で場当たり的な性格は2話の時点で既に十分に描かれている。4話でヒカルとともに脱走を企てたり、南ベトナム崩壊時にはボートピープルとして国外脱出を試みるがが、あえなく失敗。対米戦争後の1978年のカンボジア戦争も含め、生涯を通してその身をベトナムに捧げることになる。
※IKKI版第三部の「黒歴史化」により、恋愛的見せ場はなかったことに。それでも、第一部、第二部、第三部、『TRUE END』その全てに登場し、物語の外1978年のカンボジア侵攻では大活躍をする。
【ニュー】Nhieu
バオの妹ニューは初登場時6歳。路上で稼ぐ兄に守られて生きていると考えているのは兄バオだけであり、しっかりしているのは実のところ妹のほう。路上をも潤す戦争特需を利用して、路上のバーガーショップを手始めに事業を拡大。瞬く間に財をなし、ニュー財団設立。口癖は「メイクマネマネ」だが、ベトナム人民の真の独立を願い、実は共産主義が嫌い。テト攻勢では解放戦線に武器を横流しし、ハノイでは格闘技興行「胡志明杯(ホーチミン・カップ)」を主催。1970年再び一文無しとなり、路上生活に戻る。1975年サイゴン陥落時に入城する北ベトナム軍相手に啖呵を切った姿も勇ましい。
※『TRUE END』化にあたり、「胡志明杯」後に財産を失い路上生活者となる設定は消失。
【ティム・ローレンス】Tim Lawrence
ベトナムに「もっとマシな戦争」をしに来たグリーンベレー所属の美少年。1950年イギリス生まれ。トレードマークは金髪の長髪と首輪、横縞のハイソックス。初登場時は15歳。なぜか黒い皮のパンツで裸だった。イギリスの貧民街出身、売春婦の母に育てられ父親は不明。1955年にヤーボの導きで渡米、米陸軍特殊部隊としてフォートブラッグ基地で育てられる。「生き抜いてやる」が口癖。ジャングルに仕掛けられたお姫さまによるトラップに惚れる。自らの恋心に気づくはるか以前からティムは彼女に惹かれていた。1966年アッテンボロー作戦におけるお姫さまとの戦いで左腕と左目を喪失し完全敗北。
※IKKI版10巻ラストで描かれた義体化、通称「ロボ・ティム」の設定は消失。新装版6巻ラストから物語は『TRUE END』へとつながり、収容所「ハノイ・ヒルトン」に収監される。
ティム・ローレンス台詞bot
【ヤーボ大佐】Colonel William Jabo
米陸軍の最強戦士にして偉大なる指導者。口癖は「もっとマシな戦争をやろう」。ロバート・マクナマラやウエストモーランド将軍らの戦い方よりも、むしろ敵であるベトナム側のサバイバル精神に強く共感している。地を這いジャングルに潜むグリーンベレー流の戦いを愛し、想像力に欠ける空軍のやり方を嫌う。ゆえに高所恐怖症であり、ヘリも飛行機も大の苦手。自分の思う理想の戦いとはかけ離れたベトナム戦争に絶望し、その反動のハーシーチョコの過剰摂取で太ってしまった。
ウィリアム・ヤーボ台詞bot
【ライトニング】Lightning
ヤーボの部下であり懐刀。放し飼いにされてるティムとは異なり、ニャチャン基地で山岳民族兵士の育成や雑務を押し付けられている苦労人。後のアッテンボロー作戦においてヤーボとティムを失ったライトニングは、悲しみゆえにヤーボに擬態するように劇太りする。十字架を首から提げているが、実はキリスト教徒ではない。女好きを装うが実は同性愛者。第二部で描かれる三連華ノルとの恋は戦いに勝つためのフェイクであった。1968年テト攻勢の戦いの中、フエ王宮にてズオンに敗れ死亡。
【アーロン】Arron
米陸軍特殊部隊の犬。犬種はアフガンハウンド。性別は雌(メス)。名前はグリーン・ベレーの創始者アーロン・バンクスに由来する。首輪とベレー帽はティムとおそろい。アッテンボロー作戦で左目を貫かれた瀕死のティムを献身的に支え、一命を取り留めさせる。ベトナム犬フンと出会い恋に落ち、7匹の子を残す。
※『TRUE END』では最終的にヤーボ大佐率いるティム・ローレンス捜索部隊に同行する。道中フン(雄)との仲睦まじいシーンも。
【パク・メンホ】Park Meng Ho
通称「祖国を捨てた虎」。顔に刻まれた傷が虎縞のように見える。初登場時45歳、一児の父。元朝鮮人民軍の兵士で、朝鮮戦争のさなか若きヤーボに出会い、祖国北朝鮮と妻子を捨ててグリーン・ベレーの一員となる。ベトナムの地で秘かに韓国軍猛虎師団の若き兵士を育成した。彼らは後に「百匹の虎」として格闘技大会「胡志明杯(ホーチミン・カップ)」に登場する。
※第三部の「胡志明杯」では「百匹の虎」としてメンホの部下100人がお姫さまに挑む設定があったが、「TRUE END」化の結果メンホ仇が討たれることはなかった。また『TRUE END』本編回想シーンには「野良犬たち」が時折登場する。
【ミンチ】Mince
通称「白頭巾の解体屋」。一切の言葉を話さず正体不明。頭巾姿が一見秘密結社クー・クラックス・クランのようにも見えるが、ミンチ自身が黒人であるという説も。その正体が一切描かれないままわずか2話で死亡。しかし後にTシャツやCDジャケットになるなど、アイコンとして自立する。
【新装版】第2巻 登場キャラクター(双葉社『ディエンビエンフー』2巻より。描き下ろし『チョコレート帝國』2話収録)
【カリフラワーのじじい】Cauliflower
通称「爆弾の魔術師(ウィザード)」。クレイモア地雷を駆使し、魔方陣のようにトラップを仕掛ける。野良犬たち最年長。お姫さまに真っ二つされなながらも自らのトラップで自爆するというプライドがある。全ての爆弾を愛するが唯一原子爆弾(アトミック・ボム)だけは大嫌い。
Wikipedia「クレイモア地雷」
【ダンニャワード】Dhanyavad
通称「神秘のヨガ・マスター」。名前はヒンドゥー語で「ありがとう」を意味する。さりげなくベトナム犬を戦場から遠ざけるなど、生命を愛する心がある。唯一の台詞は「ムー」。手足が伸びるのは『ストII』のダルシムの影響。
※『TRUE END』2巻カバー表1の隅っこに小さく浮遊するダンニャワードを発見できる。
【リトル】Little
通称「静かなるネイティヴ・アメリカン」。アリゾナ州ネイティブ・アメリカン居留地出身。その名とは裏腹に巨体だが、未熟児として生まれ、実はハートが小さい(リトル)。瞑想術「ビジョン・クエスト」により、ティムの未来を視てしまう。お姫さまに殺され、瞬く小さな光(トゥインクル・リトル・スター)となりこの世とあの世を彷徨い続ける。ティムと友情らしきものを築いた唯一の野良犬メンバー。
※リトルは預言者であり、その死後も瀕死のティムと霊的な対話を何度も続けている。しばしば口にする言葉は「未来は決まっていない」。これはIKKI版の打ち切り、第三部「ホーチミン・カップ」の黒歴史、そして「TRUE END」化も示唆しており、物語から外れたメタ的な目線とも解釈できる。文字通り「全ての世界を超越的に見渡している」存在。
【リトル・ママ】Little Mama
リトルの回想に登場する母親。リトルを生んだようにはとても見えないほどに小柄だが、ハートは大きい。ジョン・ウェインの映画やプレスリーの音楽が好きな現代人。
Wikipedia「インディアン居留地」
【秘密警察】Secret Polise
グエン・カオ・キ南ベトナム首相直属の秘密警察。汚い仕事を引き受ける元空軍のごろつき集団。伊達男カオ・キに倣って黒ずくめのロックンロールなファッションで決めている。
Wikipedia「グエン・カオ・キ」
【ズオン】Duong
心穏やかな戦闘僧侶(ウォーリアー・モンク)。元不良だったが、おばあちゃんに教育され、背中に入れたタトゥーを隠し僧侶としてフエ近郊の農村で暮らしている。戦争への抗議として焼身自殺したクァン・ドク師のように、いつかは焼身自殺したいとぼんやり夢見ている。黒い三連華の育ての親だが、面倒見のよさが災いして未だ独身。1968年テト攻勢の激戦地フエ王宮にてライトニングに完全勝利。しかしその直後「諸行無常」を感じ自死する。宗教も政治にも興味はなく、圧倒的に強いことと、持って生まれたヤンキー気質の面倒見の良さが彼を今の立場にさせた。
Wikipedia「僧兵」
【ディン】Dihn
北ベトナム軍第32連隊を率いる智将。ヘビー・スモーカー。抗仏戦争をおばあちゃんやトンとともに戦い抜き、ディエンビエンフーの戦いにおいて右目を失う。1965年11月プレイク米陸軍特殊部隊基地を強襲し勝利する。痩身ながら怪力。タバコが切れるとイライラするらしい。山岳の50人との戦いで自軍を全滅させた挙句死亡。
ディン台詞bot
【トン】Tuong
北ベトナム軍第33連隊を率いる猛将。ディンとは幼馴染み。巨大な大鉈をふって集団をなぎ倒す様はまさに無双。得意技は頭突き。集団戦として勝利したプレイク基地の戦いにおいてヤーボに敗退。真っ赤なトマトに成り果てる。
【インソムニア】Insomnia
通称「まどろみを知らないスナイパー」。野良犬たちの狙撃兵。カメラと狙撃は似ているという持論があり、たまたまそこに居合わせただけのヒカルを「優秀なカメラマン」と評価。ロバート・キャパに憧れて購入したツァイス社コンタックスⅡをヒカルに託す。ヒカルのファインダーの中微笑みながら永遠の眠りにつく。
※インソムニアは回想以外では『TRUE END』には登場しないが、彼の意思として「コンタックスII」はヒカル・ミナミに手渡される。
【新装版】第3巻 登場キャラクター(双葉社『ディエンビエンフー』3巻より。描き下ろし『チョコレート帝國』3話収録)
【ジャジャマル】Ja-Ja-Maru
通称「アメリカン忍者」。影として人目を忍ぶ忍者なのに、正反対の派手ないでたちは「目立つ人間を人は撃ちにくい」という持論に基づく。土団(どとん)の術で寝るなど、野良犬たちに属しながらも距離を置くのは、ある秘密をティムに知られたくないため。必殺技は「ジャジャマル忍法全部盛り」。後のアッテンボロー作戦において、全身全霊でお姫さまに挑む。必また殺技「全部盛り」はティムに継承される。
※『TRUE END』には回想でしか登場しないが、2巻カバーの通信機はジャジャマルのものである。
ジャジャマル台詞bot
【パイナップル少年】Pineapple Boy
トン率いる第33連隊に属する軟弱な北ベトナム軍兵士。トン将軍の危機に勇気を振り絞りヤーボ大佐の前に立ちはだかるが、パイナップル(手榴弾)を咥えさせられ爆死。
Wikipedia「マークII手榴弾」
【7匹の子犬】7 Dogs
ベトナム犬フンとアーロンの子供たち。ビーグル犬とアフガンハウンドの雑種であり、人間で言うならアメラシアン(ベトナムとアメリカの混血)。ベトナム戦争後の世界の象徴。
※7匹の子犬は新装版『ディエンビエンフー』3巻や『TRUE END』3巻のラストなど、「1978年カンボジア侵攻」のシーンで度々登場する。また、子犬たちがどのタイミングでどこで生まれたかは明言されていない。
【新装版】第4巻 登場キャラクター(双葉社『ディエンビエンフー』4巻より。描き下ろし『チョコレート帝國』4話収録)
【ハイ・バー・チュン(徴姉妹)】Hai Ba Trung
後漢の時代、紀元40年に中国に対し独立闘争を起こしたチュン・チャク(徴側)&チュン・ニ(徴弐)双子の姉妹。古代ベトナムの革命の戦士の意思は、ベトナム戦争の時代お姫さまやおばあちゃんに受け継がれる。テト攻勢でお姫さまが試みた分身術「ハイ・バー・チュン・アタック」の語源でもある。
※歴史の中に実在するキャタクター
Wikipedia「徴姉妹」
【ティ・サック(詩索)】Thi Sach
チュン・チャクの夫。劉隆によって惨殺され、見せしめとして頭部を塩漬けにされる。
※歴史の中に実在するキャタクター
【山岳の50人(モンタニャード・フィフティ)】Montagnard 50
米陸軍特殊部隊の計画「CIDG(民間不正規防衛集団)」によって生まれた、ベトナムの少数山岳民族チャム族50名からなる精鋭部隊。
Wikipedia「民間不正規戦グループ」
【ララ】Rah Rah
山岳民族のリーダーにして第一夫人の子。子供のような小柄な体に狡猾で明晰な頭脳を持つ。マイノリティとして差別されてきたチャム族の立場から、ベトナムの主要民族キン族に対して強い恨みを持っている。自らのルーツであるチャンパ王国に思いを馳せるロマンチストな側面も。お姫さまに圧倒され自死を選ぶがそれもかなわず、無残に散る。
【ウップ】Uoop
第二夫人の子。巨漢で迫撃砲を持ち上げて運ぶほどの怪力の持ち主。ララを背中に背負って歩く。ディンとの死闘の末、兄ララに迫撃砲で打ち抜かれて死亡。
【テウ&レウ】Tehw & Lehw
第三夫人の子。一卵性双生児。戦闘時はお互いが盾や矛となりスイッチしながら連携して戦う。
【トン&ディン(幼少期)】Thong & Dihn(Childfood)
フランス領インドシナで悪童だった頃のトン&ディン。ディンは幼少時よりヘビースモーカーだったディンは初恋をするほど大人びていて、反対にトンはただの食いしん坊だった。歴史のうねりの中でやがておばあちゃんに出会い、ディエンビエンフーの戦いに参戦する。
Wikipedia「フランス領インドシナ」
【マルグリット】Marguerite
ディン初恋の相手。男性もののハットをかぶったフランス娘。モデルはフランス領インドシナのサイゴンで生まれたフランス人の小説家マルグリット・デュラス。仏印時代を背景に、フランス人とベトナム人富豪の恋を描いた『愛人〜ラマン〜』他で知られる。
Wikipedia「マルグリット・デュラス」
【黒い三連華】San-Ren-Ka
それぞれ戦災孤児だったロン、ノル、ティ。三人には血縁はないが姉妹としてズオンが育て、戦士として訓練した。クアンガイ省の解放戦線支配地域出身で、弟分のチビッコ小連華らの面倒を見るなどコミュニティを支えている。1968年のテト攻勢で大活躍を果たすが、三人のうち二人が戦いの中命を散らす。
※ロン、ノル、ティそれぞれについては本格的に三連華が活躍する「第二部」で個別に説明。また、それぞれの死後、亡命後も、『TRUE END』に回想として何度か登場している。
【新装版】第5巻 登場キャラクター(双葉社『ディエンビエンフー』5巻より。描き下ろし『チョコレート帝國』5話収録)
【黒づくめの男】Black Man
ロンドンに舞い降りたフードをかぶった長身の男の正体は、ベトナム入りする以前のヤーボ。極秘裏にイギリスに入国し猟奇殺人犯人であり当事5歳のティムをスカウトし、米陸軍特殊部隊発祥の地フォートブラッグ基地にて「野良犬たち」を編成する。
【ロンドン警視庁(スコットランドヤード)】Scotland Yard
「現代のジャック・ザ・リッパー」と呼ばれた1955年ロンドン貧民街の連続殺人事件を追いながらも、突如現れたヤーボに惨殺されてしまう気の毒な人々。
Wikipedia「ホワイトチャペル」
【ミス・グロスマン】Ms. Grossman
フォートブラッグ基地心理センターに勤務する精神科医。幼いティムに劣情を抱き惨殺される。『殺人の心理学』の著者デーブ・グロスマンに由来。
【ティム・ローレンス(幼少)】Tim Lawrence
イギリスの貧民街出身。売春婦の母に育てられ父親は不明。1955年にヤーボ大佐の導きで渡米、米陸軍特殊部隊としてフォートブラッグ基地で育てられる。
Wikipedia「アメリカ陸軍特殊部隊司令部」
【美しき死体】Beautiful Corpse
幼きティムの手にかかってお腹を裂かれた女性。ティムを買ったお客とも売春婦をしていたティムの母親とも判明せず、作品中具体的な明言はない。
【新装版】第5巻 登場キャラクター(双葉社『ディエンビエンフー』5巻より。描き下ろし『チョコレート帝國』5話収録)
【解放戦線太めの女性兵士】Resistance Fat Girl
ふくよかなベトコンの女性兵士。トン将軍とともにイアドラン渓谷で戦い、戦場でもしっかり食べるなどライフスタイルからトンの強い影響を受けている。トンを殺したヤーボ大佐に恨みを持ち、1966年アッテンボロー作戦終了後手負いのヤーボを強襲する。
【旧IKKI版 第二部】第7巻 登場キャラクター(IKKI版『ディエンビエンフー』7巻より。「第二部」「第三部」に当たる旧IKKI版7巻以降は移籍に伴い紙と電子版が絶版となり、流通在庫のみが存在。新装版刊行の予定もなく入手困難。新装版との差別化でここでは「旧IKKI版 第二部」とした)
【ヒカル・ミナミ】Hikaru Minami
テト攻勢のちょうど一年前、1967年の第二部スタート時21歳。米陸軍を離脱しクアンガイ省の村に身を寄せる。テト攻勢ではヤスクニとともに「赤城」部隊として行動。解放戦線に溶け込み戦況の苛烈さとは反対に日常を楽しく送るが、既に米陸軍報道部ではなくカメラを持たない彼はその存在理由を問われ「幽霊」になってしまい失踪する。
※第二部ラストにおけるヒカルの失踪は、「TRUE END」においては「脱走兵として捕らえられ営巣入り」という形で引き継がれる。黒歴史化された「第三部」(IKKI版11〜12巻)では「心を失い非人間化した仮面の男」として登場するが、『TRUE END』ではそれはなかったことに。
【お姫さま】Princess
ベトナム民族解放戦線最強の少女戦士。アッテンボロー作戦でティムを完璧に下すも、さらなる高みを目指すために中国で修行中。この時13歳。1968年テト攻勢で「ハイ・バー・チュン・アタック」を繰り出すもヒカルの浮気を目の当たりにし、戦線離脱。テト攻勢は総崩れとなり、解放勢力は敗走する。
【ロン】Ron
黒い三連華の長女。優秀な司令塔にして知恵者。第二部開幕時、1967年の時点で17歳。テト攻勢では決死部隊「蒼龍」を率いる。小柄だが、戦闘スタイルは最もパワフルで、両手首の鋼鉄の腕輪を用いて力で敵を叩き潰す。少しも良いと思えないヒカルになぜか次第に魅かれていく。テト攻勢の夜、巨大化したライトニングとの戦いの中で自爆。
※三連華は『TRUE END』でもテト攻勢の回想シーンで登場するが、深くは掘り下げられない。
【ノル】Nol
黒い三連華の次女。第二部開幕時15歳。長いマフラーとストレートヘアーが特徴で、同姓からの支持は絶大。対戦車砲RGBを担ぐ少女部隊「パンツァー突撃少女隊」を束ねる。テト攻勢では「飛龍」を率いサイゴンとフエで戦った。異性に対して恋心を抱いたことがなかったが、ロンの敵を討つべくライトニングに挑んだ折、初めて一目惚れしてしまい快楽に身をゆだねる。育ての親ズオンが無意識に放った一撃でフエ王宮に死す。
Wikipedia「フエ」
【ティ】Thi
黒い三連華の三女。第二部開幕時9歳。AK-47カラシニコフの使い手。テト攻勢ではおばあちゃんの密命を受け中国へ。身代わりとなり「ハイ・バー・チュン・アタック」を完成させる。非業の死を遂げたロン、ノルの姉二人とは異なり、最終的に米脱走兵の恋人と手を取り合い中国へ逃亡。国を捨て出産、愛に生きる。
【チビッコ小連華】Sho-ren-ka
三連華にあこがれる少年少女兵。名前はクー、アン、ガイ。兵士として訓練された孤児という立場は三連華も小連華同じだが、ロンいわく「ゆとり世代」。テト攻勢後ソンミ村事件に遭遇する。
【バオ】Bao
サイゴンの浮浪児。アッテンボロー作戦を生き抜いた証としてヤーボ大佐のベレー帽を見せびらかし、ウソの武勇伝で愚連隊「西貢哀歌(サイゴン・バラード)」を組織。第二部開幕時10歳ながら初代総長として君臨する。1968年テト攻勢明けに誤まって地雷を踏みもう片方の足を失い、行方不明となる。
※黒歴史となった「第三部」ホーチミン・カップにおいて、鮮血の医療団の改造手術を経て、空を飛びミサイルを放ち大活躍するバオ。しかし『TRUE END』では改造種ずつは受けず「両足を失い音信不通になった」程度の展開に留められている。『TRUE END』本編には2巻らから登場、特に第3巻においては物語上の「回し役」として重要な役目を果たす。
【 西貢哀歌(サイゴン・バラード)】Saigon Ballad
サイゴン貧民街の不良たちから構成される愚連隊。初代総長はバオ。構成員は最大で600名に膨れ上がったが、テト攻勢時に一斉攻撃に参加するも夜が明ける前に潰され即解散。
【ヤスクニの親友】Yasukuni's Friend
牛乳瓶の底のような眼鏡をかけたヤスクニの友達。視力が悪いため特攻隊に召集されることもなく海軍飯炊き係に配属される。その魂は靖国神社に奉られ、遠く離れたヤスクニに時折呼びかける。「ヤスちゃん」と。
【旧IKKI版 第二部】第8巻 登場キャラクター(IKKI版『ディエンビエンフー』8巻より)
【ライトニング】Lightning
米陸軍特殊部隊。ヤーボ大佐とティムを失い始末書整理に追われる過酷なストレスから頭部が禿げ上がり、のちに激太りする。1968年テト攻勢ではチビネコと共に戦車隊を率いて大活躍する。三連華ノルを手玉に取るが、フエ王宮でのズオンとの死闘で死亡。
※プレイボーイに見せかけて同性愛者であること、首から下げた十字架の意味、激太りしてしまう精神の弱さなど、黒歴史化や「TRUE END」化とは無関係にライトニングについては説明されていない設定が多くある。掘り下げて描きたかった人物の一人。
【チビネコ】Lil Cat
ライトニングを慕いともに行動する片腕。戦車隊を率いて古都フエ戦より本格参戦。フオン河上でノル率いるパンツァー突撃少女隊と激突するが完敗。フエ王宮攻防戦ではライトニングの後を追うようにズオンに惨殺される。
※フエ攻防戦で大活躍したチビネコは詳細なバックボーンが明かされないままのキャラクター。第三部「胡志明杯」に、瓜二つの姉妹を登場させるなど、人物像を掘り下げるアイデアもあった。
【編集長】 Chef Editer
在サイゴン米陸軍報道部星条旗新聞編集長。「第一部」冒頭以来久々の登場。爆破テロを受けても死なない見た目に反したタフガイだったが、世界的に有名なテト攻勢の狂気的なシーン(写真エディ・アダムス)を目の当たりに、「呪われろ」と一言残し拳銃を加え自らの頭を打ち抜き死亡。
Wikipedia「グエン・ゴク・ロアン」
【旧IKKI版 第二部】第9巻 登場キャラクター(IKKI版『ディエンビエンフー』9巻より。9巻は「お姫さま」の出生に関する重要な内容を含むため、双葉社『TRUE END』においても同内容を説明している)
【カイン(阮福景)】Cahn
ザーロン帝の息子。長兄ながら皇帝の座を弟ミンマンに譲る。どことなくヒカルを思わせる見た目と性格。ベトナム犬フンを飼っている。首の十字架からわかるようにキリスト教徒。
※歴史の中に実在するキャタクター
Wikipedia「阮福景」
※『TRUE END』本編にもグエン王朝についての説明の中で登場。
【ミンマン(明命帝)】Minh Mang
カインの弟でありグエン朝二代皇帝。父である先帝ザーロンの政治の逆を歩み、フランスの武力援助や宗教を拒み、ベトナムの真の独立を望む。兄と異なりかなりの武闘派であり、おばあちゃんのように仕込み杖を操る。
※歴史の中に実在するキャタクター
Wikipedia「明命帝」
※『TRUE END』本編にもグエン王朝についての説明の中で登場。
【レ・ヴァン・ズエット】Le Van Duyet
ザーロン帝とともに独立戦争を戦った腹心。カイン派としてミンマンの暗殺を幾度となく企てる。
※歴史の中に実在するキャタクター
【フン(雄)】Hung
長兄カインの飼い犬。ベトナム建国の王「雄王」にちなんでカインが命名。1973年タンソンニャット空港にも出現するなど時を越えて物語に登場。ミンマンいわく「永劫を生きる魔犬」。
【クオン・デ】 Cuong De
ザーロン帝の血を引く王族。何不自由なくフエ王宮で暮らすはずの人生は、おばあちゃんとの出会いによって激変。「ベトナム最後の皇帝」として担ぎ出され東遊運動に参加。海を渡り日本へ亡命する。当時メイドをしていた若きおばあちゃんと結ばれる。お姫さまにとっては「祖父」に当たる存在であり、その血筋ゆえおばあちゃんは「プランセス」と呼ぶ。日本への亡命の騒動でヒカルと同じ左ほほに傷を負う。
※歴史の中に実在するキャタクター
Wikipedia「クォン・デ」
※『TRUE END』本編にも回想の中で登場。IKKI版ほどのボリュームではないが、「謎のメイドさん」との出会いが『TRUE END』2巻に、逢いびきが『TRUE END』3巻において描かれている。
【謎のメイドさん】Maid
フランス領インドシナ時代のおばあちゃん。この頃よりベトナムの「真の独立」を望みファン・ボイ・チャウらと地下活動に暗躍する。クオン・デと恋に落ち、人知れず子を産む。
※IKKI版9巻ほどの掘り下げはできなかったが、グエン朝の人々とともに『TRUE END』においても登場する「謎のメイドさん」=若きおばあちゃん。『TRUE END』でメイドさんを気に入ったなら、ぜひIKKI版9巻を入手し、その奔放な魅力に触れて欲しい。
【ファン・ボイ・チャウ】 Phan Boi Chau
女たらしのイケメン革命家。植民地支配に反抗し、クオン・デを担ぎ上げ「ベトナム維新会」や「東遊運動」を起こす。若きおばあちゃんに恋心を抱き共闘するが、ふられてしまう。放浪の果てにフエ王宮に軟禁され死亡。
※歴史の中に実在するキャタクター
Wikipedia「ファン・ボイ・チャウ」
【レー・ティ・トラン】
美しきクオン・デの妻。フエ王宮に暮らし二人の子を産む。フエ一番の美貌と讃えられ、クオン・デが去った後も妻として女として生きる。
※歴史の中に実在するキャタクター
【クオン・デの子どもたち】Insomnia
クオン・デとレー・ティ・トランの息子たち。グエン朝の開祖ザーロン帝の息子カインとミンマンの面影を残し、長兄はぼんやりしており、弟がしっかり者。
【旧IKKI版 第二部】第10巻 登場キャラクター(IKKI版『ディエンビエンフー』10巻)
【僧兵象戦車隊】ELephant Tank
古代の戦車=象。フエ王宮を制圧したチビネコ率いる米戦車隊に対向してズオンが組織したアジア象による戦車部隊。象を駆るのは全員僧侶。
Wikipedia「動物兵器」
【ズオン】Duong
1968年テト攻勢の激戦地フエ王宮にて、凶暴さをフルパワーで発揮。チビネコを瞬殺し、ライトニングに完全勝利。しかしその直後「諸行無常」の域に達し、ガソリンをかぶり自死。実はお経を一切暗唱できない「いんちきボーズ」だった。背中の刺青は悪ガキだった頃に入れたもの。
※ズオンの「鬼モード」は『TRUE END』では回想の中に登場。その凶暴さをもっと描きたかった最強の一人。
【ウィリアム・カリー小隊】William Calley Jr.
史実ではソンミ村事件の当事者。物語上でヒッピーめいた味付けがされている。1968年3月16日チビッコ小連華に遭遇する。
※歴史の中に実在するキャタクター
Wikipedia「ソンミ村事件」
【鮮血の医療団(ブラッディ・メディック)】Bloody Medic
ドイツ系の移民ドクターM(メンゲレ)によって編成された特殊な衛生兵集団。両足を失ったバオの命を救いつつ同時にサイボーグ化。地球外生命体や鉄腕アトムのような姿に改造し実験を繰り返す。ニュー財団と組んで遺体から自立型ドローン兵器「蟲」を開発。ヤーボ大佐率いる特殊部隊とは思想の違いからライバル関係にあり、ティムをめぐって争うことになる。1970年開催「胡志明杯」では出場選手とリング・ドクターを兼任。
【蟲】Insect
鮮血の医療団とニュー財団が共同開発したドローン兵器。戦死した兵士の遺体を用いて労働力としてサイボーグ化。意識の断片はあるが意識はコンピューター制御されており個性はない。あらゆる環境に適応するために人型はしておらず昆虫に似ている事から「蟲」と呼ばれる。「胡志明杯」の招待状を配ったり、大会出演者を探索したり、身を挺して人命を守ったりと、ベトナム全土に散らばり大活躍。
【天使くん】Angel
かつてティム・ローレンスと呼ばれた米特殊部隊の兵士。左目と左腕、記憶すら失っているがカンボジア国境村で多感な少女の慰みになりなあらかろうじて生きている。少女いわく空から落ちてきたから「天使くん」だそう。
【黒歴史 第三部】第11巻 登場キャラクター(IKKI版『ディエンビエンフー』11巻より。IKKI休刊後に描き下ろしで刊行された11、12巻は、ハノイ編としてホアンキエム湖を舞台に格闘技大会「胡志明杯」が開幕。最短最速の完結を目指す「TRUE END」ではこのエピソードを扱いきれず、結果この第三部は「黒歴史」となった)
【地球外生命体(エイリアン)】Alien
サイゴンの街に夜な夜な出現する謎の生命体。1958年に発足したNASA(アメリカ航空宇宙局)が宇宙から持ち帰った異星生物との噂があったが、その正体は鮮血の医療団に下半身を改造された無残なバオ。ニューが回収を命じるが捕獲にはいたらず。
【お姫さま】Princess
第三部開幕時15歳。テト攻勢後一度は決別したヒカルを探すも発見はかなわず、おばあちゃんとホアンキエム湖で修行の日々を送る。ホアンキエム湖より伝説のレ・ロイの大剣を発掘し、格闘技大会「胡志明杯(ホーチミン・カップ)」に挑む。
※黒歴史となった「第三部」でも重要なアイテムとして登場する「レ・ロイの大剣」。この時点ではお姫さまが持つ最強武具と設定されているが、『TRUE END』本編では大剣の担い手はおばあちゃんに変更。お姫さまは「ザーロン帝の杖」を用いる。
【おばあちゃん】Grandmother
ベトナム最強のおばあちゃん。お姫さまよりヤーボより戦闘能力は遥かに上位にあり、今のところ敵が見当たらない。テト攻勢の失敗以降、北ベトナム軍中枢部と南ベトナム民族解放戦線との間で苦労することも。ホー・チ・ミンの死を受け格闘技大会「胡志明杯」を発案。出場選手、解説員、プロデューサーとして八面六臂の活躍を見せる。
※一見するとこの画像でおばあちゃんが抱えている赤子は「お姫さま」だが、その本当の正体は『TRUE END』3巻で明かされる。戦争を超えていく希望の象徴。
【フン(雄)】Hung
通称ベトナム犬。永劫を生きる魔犬。亀とともにベトナム全土へ「胡志明杯」招待状を配達する。
【ホアンキエム湖の亀】Ho Hoan Kiem Turtle
ホアンキエム湖に棲む亀。レ・ロイの時代から生きている神の使いとも言われる。ベトナム犬と並ぶ第三部のマスコット。おばあちゃんとお姫さまに同行。ベトナム犬とともに「胡志明杯」招待状を配る。現実の亀はスッポンだがそれだと手紙を加えられないため、アレンジを施した。
※歴史の中に実在するキャタクター
Wikipedia「ホアンキエム湖」
※「第三部」「胡志明杯」ののマスコット的に登場した亀は、トーナメントバトルが消えた『TRUE END』本編にも「おばあちゃんの要請によりレ・ロイの大剣を空輸する」という重要な役目で登場する。
【レ・ロイ】Le Loi
13世紀、神より賜ったホアンキエム湖の大剣で中国の支配からベトナムの勝利を勝ち取りレ王朝をいた。大剣を湖の亀に奉納したという伝説が伝わる。その魂は今も湖の底の剣に宿る?
※歴史の中に実在するキャタクター
Wikipedia「黎利」
※大剣にはレ・ロイの霊魂が宿り、お姫さまはレ・ロイの霊と連携して戦うという設定があったが、黒歴史化によって消失。『TRUE END』3巻にも大剣は登場するが、その絶大な力は抑えられレ・ロイの登場も回想内に留まった。当初の予定よりも扱いが小さくなってしまった伝説の英雄。
【ヒルトン姉妹】Hanoi Hilton Sisters
ハノイの捕虜収容所「ハノイヒルトン」の看守コンビ。1966年イアドラン渓谷の戦い後に腹を切られ絶命寸前だったヤーボ大佐を収監。3年以上ほとんど水しか与えず、ハーシーチョコで膨れ上がった巨体を段階的に激痩せさせる。実在するヒルトンホ・テルとは無関係。
※旧IKKI版ではヤーボを捕獲したヒルトン姉妹だが、『TRUE END』本編には登場せず。収容所の看守の役割は「TRUE END」の新キャラ「モロッコの門番」に差し替えられている。
【ニュー】Nhieu
元サイゴンのストリートチルドレン。第三部開幕時においてもわずか11歳。財団を立ち上げ、おばあちゃんが発案した「胡志明杯」に巨額投資を行い興行化。ドローン兵器「蟲」をドクターMと共同開発するなど手広くビジネスを広げるが、1970年実の兄バオによって「胡志明杯」を潰され、多額の借金を背負い財団は解散。一文無しに逆戻りしサイゴンの貧民街に暮らす。1975年サイゴン陥落時に入城する北ベトナムを一喝したのだから、園頃には別のビジネスで完全復活しているはず。
※『TRUE END』では胡志明杯は存在しないため、ニューは興行主ではなく破産もせず、路上生活に戻ることはない。一方兄のバオは「TRUE END」化で胡志明杯の活躍が消えストリートに逆戻りしている。
【バオ】Bao
サイゴンの浮浪不良少年。第三部開幕時12歳。テト攻勢時地雷を踏んで死んだかに見えたがドクターMの改造手術によって一命を取り留める。鮮血の医療団代表としてチェーンソー・ナースとのタッグで「胡志明杯」に参戦。ニューいわく「番狂わせを起こす最大のダークホース」。実際に大番狂わせを起こしニュー財団を破滅させる。両足を失い片目を潰されても、物語の終わり1973年を超えて生き残り、1978年カンボジア戦争におばあちゃんとともに出兵。
※黒歴史となった「第三部」で初めて主役級の扱いとなったバオ。全身の機械化によりパワーアップし「地獄の軍団」に勝利、チェーンソー・ナースとの淡い初恋も描かれ「胡志明杯」の主役とも言える活躍ぶりだったが、「TRUE END」化により全てはなかったことに。
【チェーンソー・ナース】Chainsaw Nurse
鮮血の医療団の極端に無口な看護師。麻酔薬の大量投与で記憶がすでになく、何のためにいつから医療団にいるのか彼女自身知らない。口をきつく縫合されているため点滴で栄養を摂取しているらしい。バオとタッグを組み「胡志明杯」Aブロックから出場。得意のチェーンソーでイン&ヤン兄弟を撃破する。タッグを組んだバオに心惹かれるがそれを言葉にする術を持たない。
【仮面の男】The Man in the Mask
カンボジア国境付近に建設された「霧の王国」。暴力が支配する謎めいた国に暮らす元米陸軍報道部の兵士。つまり心を失ったヒカル・ミナミ。カメラも記憶も失っているが狙撃中を担ぎ、かつてインソムニアに言われた通りに「優秀なスナイパー」になってしまった。暴力の権化である「地獄の軍団」を率いて「胡志明杯」に参戦。
※双葉社移籍による第三部の黒歴史化、「TRUE END」化において最も大きな変化が、仮面の男の正体。旧「第三部」においてはその役目はヒカルが担い、『TRUE END』ではティムの役回りになっている。結果的にこの入れ替わりが「果てしないトーナメントバトル」を「最短最速の完結」へと変えた。
【ドクターM(メンゲレ)】Dr. Mengele
ドイツ移民のアメリカ人医師にして米陸軍衛生兵部隊「鮮血の医療団」を率いる。ナチスドイツ将校ヨーゼフ・メンゲレと類似しているがヨーゼフは国際手配を逃れ南米に亡命しておりドクターMとは別人物。「医療こそ戦場において最強」という哲学を持っておりベトナム戦争以前から思想的にヤーボ大佐と対立。1966年おばあちゃんに破れ消息不明となったヤーボを追う。実はともに部隊を率いるリーダーとして不思議な友情で結ばれている。月に一度の総回診が日課。
※「第二部」10巻のラストにも鮮血の医療団、ドクターMは「引き」として登場するが、その伏線は『TRUE END』では特に回収されない。13巻以降が刊行された場合は、ヤーボとドクターMがティムをめぐって対立しつつも、友情を育むという展開が予定されていた。また実在するヨーゼフ・メンゲレは『ブラジルから来た少年』などフィクション作品のモデルとなっており、ドクターMはフィクションの孫引き的な存在である。
Wikipedia「ヨーゼフ・メンゲレ」
【リトル】Little
精霊となりベトナム戦争やティムの行く末を見守り続けるネイティヴ・アメリカン。元野良犬たち。おばあちゃんと交信し未来を告げる。
※リトルは幻の第三部においても「TURE END」化においても物語の外、霊的な傍観者として重要な役割を果たし続ける。平行世界も彼にとってはまた必然。
【水陸両用レンジャー部隊(米海兵隊代表)】U.S.Army Ranger
米海兵隊レンジャー部隊代表。指先に水かきがあり水中戦を得意とするが、見せ場もなくクメール・ルージュの残忍さの前に完敗。
【百匹の虎(韓国代表)】100 Tigers
ベトナム戦争に参戦した韓国軍猛虎師団の精鋭部隊。顔に刻まれた虎縞の傷は、元北朝鮮人民軍の戦士パク・メンホによるニャチャン基地での厳しい訓練の賜物。同じ民族としてパク・メンホを尊敬しながらも、野良犬たちとして死なせてしまったヤーボ大佐やティムには恨みを持っている。Cブロック第一回戦でヤーボに敗退。
【ロボ・ティム(米陸軍衛生兵)】Robot Tim
米陸軍特殊部隊ティム・ローレンスの変わり果てた姿。1966年イアドラン渓谷の戦いでお姫さまに完敗、カンボジア国境付近で廃人化していたところを「蟲」が発見。鮮血の医療団による改造手術を受け、ほとんどロボットと化して復活。戦闘能力は未知数、お姫さまへの恋心やヤーボとの記憶がまだ残っているかも不明。目からビームを放ち、蟲やアボリジニ音楽隊を一瞬でなぎ払う。
※機械化という発想のルーツはアレハンドロ・ホドロフスキー原作コミック『メタ・バロンの一族』。「TRUE END」化によりロボット設定は消えたはずだが、『TRUE END』2巻でのクチ地下トンネルでのお姫さまとの激闘では、どさくさでなぜか「目からビーム」を撃つシーンも。
【黒歴史 第三部】第12巻 登場キャラクター(IKKI版『ディエンビエンフー』12巻より)
【アーロン】Chainsaw Nurse
特殊部隊の犬。雌。イアドラン渓谷の戦いの後、瀕死のヤーボ大佐の命を受け頭部を貫かれたティムの命を救うなど活躍。米特殊部隊代表ヤーボのパートナーとして「胡志明杯」に参戦するも、ヤーボが強すぎてすることがない。首輪とベレー帽がティムとお揃いであり、近い未来にティム同様左眼を失う運命が示唆されている。最終的にロボットになるかどうかは不明。
※第三部の黒歴史化により、ティムとアーロンの強い絆を描いた「左眼から刃物を抜く」シーンはなかったことに。『TRUE END』においても、具体的なティム救出劇は描かれない。
【地獄の軍団(カンボジア国境代表)】Army Corps of Hell
ベトナムとカンボジアの国境付近に発生した謎の国「霧の王国」に君臨する暴力集団で、周辺の人々から「神」と崇められている。ベトナム戦争の狂気に入り込んだ国や敵味方を問わない多種多様な脱落者たちが辿り着く場所。仮面の男によって統率される。
※黒歴史化によってその役割が大きく変化したキャラクターたち。『TRUE END』にも登場するが、その凶暴さは胡志明杯よりも矮小化された。
【モンの一族(ベトナム山岳民族代表)】Hmong Girls
南ベトナム山岳民族モン族代表。少女たちが憧れそうな奇抜でカラフルなファッションだが、おしゃれなど無頓着な地獄の軍団により惨殺される。
【紅衛兵革命少女隊(中国代表)】Red Guard Girls
中国代表毛沢東の文化大革命を実行する女学生チーム。中華人民服を身にまとい、「自己批判」と「粛清」を得意技としていたが、あっけなくヒルトン姉妹に敗北。
Wikipedia「紅衛兵」
【カイエ・デュ・シネマ撮影隊(フランス代表)】Les Cahiers du cinema Crew
フランス代表の文化人。ベトナム戦争から遠くはなれて批評を試みることが目的というひねくれた文系インテリ集団。しかし映画製作で鍛えられた体力は伊達ではなく、ムエ・ラオス軍団勝利。続く試合に臨む前に航空爆撃に遭遇し、カメラを回しながら死亡。フィルムも燃え尽きる。
Wikipedia「ベトナムから遠く離れて」
【シベリアの殺人熊(ソ連代表)】Siberian Bear
北ベトナムを軍事援助しているソ連軍の代表。熊だか人だかよくわからないまま、お姫さまに敗北。暑さが苦手な彼らがベトナムで戦うこと自体が間違いだった。
【ムエ・ラオス軍団(ラオス代表)】Muay Laos
ベトナムの隣国ラオス代表。ムエタイならぬムエ・ラオスというラオス式の格闘技を操る謎の男たち。映画撮影隊にまさかの敗退。
【クメール・ルージュ(カンボジア代表)】Khmer Rouge
カンボジアの政治組織であり武装集団。完璧な共産主義を目指すポルポト派とともにやがて大量虐殺の実行者となるが、胡志明杯に参加した出場選手にはそこまでの強い政治意識はない。1978年ベトナム軍のカンボジア侵攻に置いて、おばあちゃんやバオらと激突する。
Wikipedia「クメール・ルージュ」
※「胡志明杯」は黒歴史化したが、クメール・ルージュは『TRUE END』1巻では、カンボジア国境付近で「地獄の軍団」とともにバトルを演じ、カンボジア語による台詞もある。『TRUE END』完結3巻のエピローグにも登場。
【麻酔医】Anesthetist
鮮血の医療団所属の麻酔医。革のかばんの中に大量の注射器を仕込ませ、都合が悪くなると麻酔注射を射ちまくる。チェーンソー・ナースの思考と記憶を消した張本人。見た目は子供、しかし中身は残虐な大人。「胡志明杯」のどさくさでバオの手により殺害される。
※非道な麻酔医に対してバオが逆襲をするという感動的な展開は、「TRUE END」化によって消失。麻酔医の存在も、バオの活躍もなかったことに。
【ヤーボ大佐】Colonel William Jabo
1966年イアドラン渓谷の戦いの後、捕虜収容所に収監された米陸軍特殊部隊最強の兵士。「やせることだ」と言い放ったおばあちゃんに復讐すべく、第一段階としてハノイヒルトンでのダイエットに成功する。「胡志明杯」で無残に変わり果てたティムに再会しドクターMを叩き潰すことを誓う。トーナメント戦のパートナーは犬のアーロン。
※双葉社移籍「TRUE END」化によって「大佐が痩せる」という設定はなくなり、1968年の瀕死状態を生き延びたヤーボは、『TRUE END』本編には太ったままの姿で登場。おばあちゃんにリベンジを挑むが、案の定惨敗。『TRUE END』1巻には数コマだけ痩せた姿を想像するカットがある。心を失ったティム・ローレンスに希望を託して物語から消える。
【黒歴史 幻の第三部】第13巻(BAD END構想) 登場キャラクター(未完となったあIKKI版12巻の続きである「第13巻」の構想より。単行本は存在しないが『ディエンビエンフー BAD END 封印資料集』としてまとめられサイン会の特典として配布された)
【バオ】Bao
番狂わせを起こして鮮血の医療団をほぼ壊滅。北ベトナムを脱し南部の村に潜む。「蟲」の生き残りとともに特殊部隊を組織。解放戦線と行動をともにし、ベトナムの真の解放に尽力する。1975年南北ベトナム統一の瞬間に亡命を試みるが失敗。1978年のカンボジア戦争ではおばあちゃんとともにクメール・ルージュとの壮絶な戦いに赴く。最終的に頭以外は機械になる。
※繰り返し描かれてきた「カンボジア侵攻」は『TRUE END』のラストエピソードにも登場。この姿でバオたちは第三次インドシナ戦争に巻き込まれていく。
【コンポン(未登場)】Cong Pong
純真なカンボジアの戦士。子どもたちに慕われる怪力のクメール民族。人を疑わない性格ゆえに「オンカー」と呼ばれるクメール・ルージュの指導者の支持のままに、虐殺に手を染めてしまう。通称「カンボジアの大巨人」。
※「TRUE END」化によって、ここで構想された13巻以降「胡志明杯」の続きは描かれない。コンポンのデザインも気に入っているが、「オンカー」というカンボジアの闇を描こうという意志が強く感じられる。
【北の老賢人(未登場)】Conference of North Wise Men
老人たちからなる北ベトナム軍最高会議。中国、ソ連とのコネクションを最重要視しているため、南ベトナムで暗躍するおばあちゃんとは思想的に対立。絶対の権力を保持しつつ、ハノイで優雅な生活を送っている。共産主義のハードコアであり、惚けたふりして凄まじく冷酷で残酷。
※「北の老賢人」という名前ではないが、それらしき存在は『TRUE END』2巻にも登場する。労働党がおばあちゃんを査問にかけるシーンがあるが、具体的な人物描写は登場しない。
【ショーンZ(未登場)】Sean Z
CIA工作員にしてトンキン湾事件をでっち上げた張本人。本名不明。女性工作員「X」、鮮血の医療団を脱出したバオを諜報部員「Y」として引き入れ、隠密作戦を遂行する。
※ベトナム戦争のきっかけとなった「トンキン湾事件」を解き明かすべく設定されたキャラクター。黒歴史となったことで、本編には一切登場しないが、バオが暗躍する展開は『TRUE END』にも生かされている。
Wikipedia「トンキン湾事件」